ちえこ風呂具

日々の事とかTOKIOとか織田信成君とかフィギュアスケートとか

織田君と「愛の夢」

織田君の動きにはバレエ表現が入っている、と長い間思っていました。先日見ることが出来たKENJIの部屋での対談で、カナダを拠点にしていた頃、バレエをスケートトレーニングの一環として行っていたと言っていたから私がそう感じるのは当然の事なのでしょう。特にモロゾフコーチに移ってから思うことが増えました。このプログラムのどこ、と言うわけではないのですが、手を広げるときの肩甲骨から手先のあたりの表現やすっと立つ時の背筋の伸ばし方がバレエ的なのです。ただ、曲調によってそういうことを感じないこともあったから曲や振付によって色々表現の仕方を変えていたのだろう、と思われます
ところでバレエ表現というと私は町田君を思い出します。特にフィリップ・ミルズのが振付けた町田君のプログラムには全てバレエの要素が入っていました。町田君自身がバレエを習っていたのかどうかについては私には知らないのですが、ミルズは去年の今井遥選手のジゼルの振付をしていてそれもとてもバレエ的な振付をしていたので、ミルズ自身がバレエ表現を得意とする振付師なのだろう、と思います。
またミルズに感銘と影響を受けていた町田君自身が振付た「継ぐ者」も、見ていて非常にバレエ的だと感じました。
なのでたまに織田君の背中を見ているとふと町田君を思い出し、また町田君の演技を見ていると織田君を思い出してしまうのです。それは振付そのものがかぶっているというよりもああ「バレエ的だな」と思った途端に互いの名前がふと出てきてしまうという感じです。
しかし二人の演技は全く違うので、二人の映像を見ながらその違いをつらつらと考えてしまうのです。しかし結局のところその違いは、バレエの動きを取り入れた表現か、バレエの演技を取り入れた表現か、というところなのだと思います。
ということを、動画でアップされている織田君の「愛の夢」を見ながらぼんやり考えていました。
織田君が今年のいつごろか「愛の夢」を滑ると知った時、大勢の方達が「想像つかない」とコメントしていました。多分、明るくユニークな表現をする彼のイメージではない、と思ったのだろうと思います。でも私はそう思わなかったし、多分織田君のファンを長年されている方は私よりもずっと「そう思わなかった」でしょう。
それは元々織田君は柔らかい表現を得意とする選手だからです。バンクーバーシーズンのEXであった「SMILE」や2011-2012年シーズンのEXである「I CAN SEE CLEARLY NOW」はどちらも静かで柔らかい曲ですが、とても彼に似合っていました。私は長い間、織田君にナット・キング・コールの「モナリサ」や「アンフォーゲッタブル」といったゆったりとした穏やかで温かみのある曲を滑って欲しいと思っていました。競技プロではなかなか感じられないことでもあるのですが、織田君はアマチュア時代からとても丁寧な表現が出来るスケーターなのですね。
そして振付師であり、元兄弟子でもあるジェフリー・バトルはそういう彼の持ち味をよくわかっていたのだろうと思います。バトルが振付けた「愛の夢」はその彼の以前からもっていた柔らかさ、またバレエを基礎とした優雅さをとても良く表している振付になっています。このステップの合間に流れるように入るジャンプも、元々織田君の持ち味ともいえる部分だと思われます。この振付にはアディオス・ノニーノを見たときのような「新しい織田信成」という驚きはありません。しかし現役時代の表現よりも、より感情に訴えかけるような深みを感じます。
現役引退後の織田君の演技には、競技プロを見ていた頃にあまり感じなかった「表現力」というものを強く感じます。しかしそれは培ってきた表現技術を、「点数を取るための表現」として使っているのか、ただ音楽を表現するためだけに使っているのか、それだけの違いなのかもしれません。
織田君の「愛の夢」はそんなことを感じさせるプログラムです。