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織田君の「リバーダンス」

1月に行われた神奈川スケートフェスティバル、国内で織田君がリバーダンスを披露しました。私が織田君の事を以前よりも熱心に追いかけていこう、と決めたばかりの時の事です。このリバーダンスという曲はそれまでも沢山のスケーターが演じてきました。記憶に新しいのはソチオリンピックでのジェイソン・ブラウン選手でしょう。彼の優れたリズム感とスケーティングスキル、そして生来持った明るいキャラクターを全世界の人たちに知らしめた良プログラムです。ただ私はリバーダンスはあまり、フィギュアスケート向きではない曲だとずっと思ってきました。足元のステップだけで見せるアイリッシュダンスは歯切れの良さが魅力です。しかしフィギュアスケートはそのスケートの滑らかさや優雅さが大事だと思うのです。私が思うアイリッシュダンスフィギュアスケート、両方の魅力を存分に感じられるプログラムというのはなかなか見られないもので、前述したブラウン選手のプログラムもアイリッシュダンスらしさというのはかなり抑えられた振付でした。
そんな中で織田君のリバーダンスです。これはスイスで行われた「アイス・レジェンド」のいうアイスショーに向けて作られた、ステファン・ランビエル振付のプログラムでした。このプログラムが演じられた瞬間、ツイッターで賞賛の声が上がりました。とてもすばらしい内容だ、織田君の印象が変わったと沢山の人たちから興奮した感想が流れてきて、当時テレビで彼のスケートを見ることを中心にするつもりでいた私はとうとう、アイスショーを現地で見る算段を立ててしまったぐらいです。
そのプログラムは結局参加した2回のアイスショーでは一度も見ることは出来なかったのですが、その代わりテレビで何度か放送されました。ひとつはファンタジーオンアイス静岡公演のもの、あともうひとつは先日行われたプリンスアイスワールド東京公演のものです。この二つの公演で放送された内容はカメラワークがあまり良くなかったのですが、それでもこのプログラムのすばらしさを十分伝えてくれました。
序盤のボーカルパートではいかにもランビエルらしいアーティスティックで優美な振り付けが随所にあります。腕をゆるやかに上下する祈りのようなポーズや、滑らかに繰り返されるターン、ひざを曲げて緩やかに回る不思議な変形キャメルも、見ていてとても引き込まれます。特に私が好きなのは途中でホップするところです。それまで氷上に吸い付くようななめらかなスケートを見せているのに、突然跳び上がるときの軽さをどう例えればいいのでしょうか。とにかく体重の重みを感じさせないので、うっかり彼は氷上の妖精か、と勘違いしそうになります。
ひざから大きく進むスケートは相変わらずですが、その動きと曲が非常にマッチしていて、特にリンクいっぱいに伸びるイーグルは自然の神秘や雄大さを感じられます。そして緩やかな序盤の曲調は徐々に熱を含んでいき、ここから音楽を盛り上げるようにジャンプが3つ、入ります。
そしてジャンプで盛り上がったところから畳み掛けるようにステップに入ります。いかにもリバーダンスといった曲調のこのステップ部分は織田君ならではの上半身の動きはほとんどない、アイリッシュらしいステップなのですが、タップを表現するトゥステップをそれほど使っていないところが面白いんですね。トゥステップを使うとなんというか「らしい」ステップになるのですが、そうではなくてターンを多用して曲の勢いを表現したり、手の動きなどで音のメリハリを表現しているところがフィギュアスケートの中のリバーダンスといった感じがしてとても面白いのです。
そしてステップの後はその盛り上がりを吸収していくように勢いあるスピンが入り、そして両手を前に広げてフィニッシュ。この最後の笑顔がなんとも爽快な気持ちにさせられます。
この織田君のリバーダンスの素敵なところは沢山ありますが、このプログラムの最大の魅力は序盤を伸びやかな楽曲をを使ってフィギュアスケートらしさを存分に表現しているところです。私はやはり序盤のボーカルパートが好きです。
これをリバーダンスかと問われればリバーダンスでないのかもしれない。けれども太陽を巡るリールという、曲そのものの表現なのだといわれればその通りなのかもしれない、と私は思います。
ああいう誰かとか何かではない、ただ祈りのような音楽と織田君の透明感のある表情やスケートを見るとなんだか胸がいっぱいになるのです。